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大阪市・大阪市ハンセン病問題検討委員会による「ハンセン病問題に関する真相究明報告書」及び大阪市ホームページに対する公開再質問書

2008年6月13日

大阪市 市長 平松邦夫殿
大阪市ハンセン病問題検討委員会委員長 永岡正巳殿             

ハンセン病問題研究会
 世話人代表 村岡 潔
連絡先********

 

大阪市・大阪市ハンセン病問題検討委員会による「ハンセン病問題に関する真相究明報告書」

及び大阪市ホームページに対する公開再質問書

 
 私たちは、ハンセン病問題について国や地方自治体による啓発、歴史検証のあり方などに関心を持ち検討をしているグループです。

  大阪市ならびに大阪市ハンセン病問題検討委員会が2006年2月に作成発行した『ハンセン病問題に関する真相究明報告書』、およびハンセン病問題に関する 大阪市ホームページについて、本年2月20日付で別紙資料の意見書を提出いたしました。それに対し、本年3月19日付で大阪市保健所感染症対策担当の寺井 氏より回答書を頂きましたが、意見書で提起した問題にはまったく触れておらず、ホームページもなんら改善されておりません。こうした大阪市の対応は、当研 究会の指摘を無視するものであり、看過することはできません。そこで、市長およびハンセン病問題検討委員会委員長に対し、前回意見書にて提起した問題点を 改めて公開質問書の形で指摘し、回答を求めます。ご回答は7月20日までにお寄せくださいますよう要請します。

 なお、前回の意見書とそれに対する市担当者の回答書、当質問書は、当研究会のホームページにて公開しております。当質問書へのご回答も、当該ホームページにて公開させて頂きますので、あらかじめご了解ください。

 

T『ハンセン病問題に関する真相究明報告書』について

 
(1)「真相究明報告」というのであれば、何の「真相」を、どこまで、どのように究明されたのでしょうか?

  報告書の主目的は、大阪市がどのようにハンセン病患者の強制隔離政策の一端を担ったかについての「真相を究明する」ことであるはずです。そうである以上、 報告書の主軸をなすべきは「六 課題と今後の取り組み」の「(3)大阪市としての検証・認識・課題整理・今後の取り組み」でなければなりません。

  しかしながら、報告書の大部分は、元患者への聞き取り内容の羅列に費やし、肝心の上述章はわずか2頁しかありません。しかも、その中で、大阪市の強制隔離 政策への関与については、143頁第5段落で「大阪市は直接強制収容等には関わっていなかったものの、地域からの患者発見の一端を担っていたことを示すも ので、全国的に展開された『無らい県運動』への関わりがあったことを示すものです」と記述しているだけです。これでは「真相究明報告」としては著しく不十 分であるといわざるを得ません。

 また、その記述に関してすら、証拠として挙げている「大阪府所蔵の資料」に ついて、報告書には「大阪府所蔵の資料の中にも、保健所が区民からの投書に対する調査を大阪府に依頼している依頼文もあります」と記述されているだけで、 報告書の中には引用も写真提示もなされておらず、内容が不明です。報告書には他の新聞記事などの資料がコピーして掲載されているのに、この肝心の資料につ いては内容が示されていないのは、理解に苦しみます。

 大阪市が「直接強制収容等には関わっていなかった」と 言い切るためには、全面的な史料の精査を終えていなければならないはずです。しかしながら、報告書には、どんな資料を、どこまで調べたのか記述がなく、 「関わっていなかった」と述べる根拠がわかりません。ここで証拠として挙げられているのは、元患者の証言と、報告書には収録されていない大阪府所蔵資料だ けです。これでは「直接強制収容等に関わっていなかった」との主張自体、検証されているとはいえません。

 当該報告書は、いったい何の「真相」を、どこまで、どのように究明されたとお考えでしょうか。上記の事項に即して、具体的にお答えください。

 

(2) 検討委員会の人選はどのようになされたのでしょうか?また、委員会および部会は、会合ごとにどのように運営され、どのような活動を行ったのでしょうか?

 

  報告書冒頭の「発行にあたって」によると「大阪市ハンセン病問題検討委員会」は、当時の磯村市長が、2003(平成15)年9月26日「本市が強制隔離政 策の一端を担ったことの反省と謝罪を行い」、「こうした過ちを二度と繰り返さないために、真相究明のための委員会を設置し、普及・啓発に努めるとともに、 今なお入所を余儀なくされている在園者の方々が社会復帰していただける環境作りを行うと表明」したことを受けて設置され、「委員には、学識経験者・弁護 士・社会復帰者・療養所入所者・支援者・大阪府・市関係各課などにお願いして、さまざまな観点からのご意見をいただきながら進めてまいりました」とありま す。

 しかしながら、驚くべきことに、大阪市自体がかつて行ったことを検証する検討委員会の委員18名のう ち、じつに7名が大阪市の職員、1名は大阪市の外郭団体(社会福祉協議会)の職員です。すなわち、真相を究明する委員会委員の約半数が、究明される当の対 象である大阪市の職員なのです。常識的に考えて、このような委員構成では、公正な「真相究明」はとても期待できませんし、検証の質にも大きな疑問を抱かざ るを得ません。

 もし当該委員会が、中立的な検討委員会の真相究明報告を受けた上で、それを反映させる政策を 検討するための委員会であるのならば、まだこのような人選は理解できます。しかし、大阪市が過去に行ったことの真相を究明する検討委員会そのものの委員 に、大阪市の職員をかくも多数含めたのでは、公平な真相究明がなされうるとは到底考えられません。

 また、 167頁の「検討委員会開催状況」には、真相究明部会と社会復帰部会の二つの部会が設置されていたことが記されています。しかし、どの委員がどの部会に所 属していたのかについては記載がなく不明です。また、それぞれの部会の活動内容も、検討委員会本体のそれぞれの回における議題についても、一切書かれてお らず、何をどのように検討したのか全くわかりません。

 委員会の人選の基準・方法・経緯、部会への所属、本委員会と各部会の会合ごとの議題および議事録、の開示を求めます。

 

U 大阪市ホームページで、ハンセン病に関する情報は、なぜ人権関連情報としてでなく、感染症情報として扱っているのでしょうか?

 
 ハンセン病に関する文書のウェブ上の設置場所にも疑問があります。現在、「ハンセン病について」という文書は、大阪市のウェブでは「健康・医療」項目中の「関連情報」の欄の「大阪市感染症情報」のページにある感染症対策課からのお知らせのところに置かれています。http://www.city.osaka.jp/kenkoufukushi/kansensyou/osirase/taisaku_4.html

し かしながら、この場所におくことにより、ハンセン病は日本において今なお感染症としての対策を要する怖い病気であるとのまちがった印象をあたえ、偏見をか えって助長させることにもなりかねません。ハンセン病問題はもはや感染症問題ではなく人権問題としてとらえるべきです。

 したがって、仮に「健康・医療」の項目におくとしても、せめて「医療」欄に新 規に「人権」に関するページをつくり、その中に置くべきであると考えます。また、そのタイトルを「感染症予防の名の下に人権侵害をおこさないために」「ハ ンセン病療養所入所者・元患者の方々の尊厳回復のために‐行政(大阪市)の責任について」等、過去の反省と人権擁護の姿勢が明確に表現されたものとするべ きです。このような対応を取らず、今日なおハンセン病関連情報を感染症情報としてだけ扱い続けるのはなぜか、お答えください。



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